畏友森田直子著『生保営業のたまごとひよこ―成長するためのヒントー』(保険毎日新聞社刊、200頁、定価1,700円+税)が刊行となったので、早速購入して一気に読んだ。保険営業という混沌とした方向感覚定まりがたい現状において、「清々しい風が吹いてくる感じ」「ようやく胸にストンとくるまっとうな生保営業の本にめぐり合えた」というのが率直な読後感である。
著者は、国内大手生保営業職員6年、その後は生損保の保険代理店として現在に至るまで、通産保険営業歴20年余の経験がある。またWebデザイナーとして、ジャーナリストとして、inswatchの共同編集人として多面的な才能を見せてくれる。独自にメールマガジンを発信し続け、前々から保険営業特に生保営業に対する視点を提示してきていた。その底流には、保険という仕組みに対する揺るぎない信頼と愛情があることである。しっかりしたバランスのとれた考え方、それを素直で簡明な文章にまとめ上げる力に感心し、その寄って来る源はどこにあるのか、知りたかった。
本書は、主としてこれから生保営業を目指そうとする方や壁にぶつかっている方に、成長するためのヒント、生保営業に対する留意点をまとめたものである。既発表の保険毎日新聞連載コラムを再構成したものだ。 構成は、第1章「発想の転換でレベルアップを狙え」、第2章「壁を乗り越える」、第3章「すぐ活かせる営業ノウハウ」、第4章「失敗しないために、もう一度自分を振り返る」、第5章「迷った時は基本にかえろう」からなっている。
本書の各章の扉に著者自身が描いた挿絵、4コマ漫画もほのぼのとした味を出している。著者自身元来気の弱い、小心者だったとの告白には、大胆、おおらかかつ突破力抜群というイメージが強かっただけに「へえー」「本当?」と正直思わずにいられなかったが、本のタイトルに「たまごとひよこ」と銘打ち、普通の営業パーソンがスタート時や中堅へのレベルアップ時に直面する問題を実に丹念かつ理解しやすく取り上げ、自らの気づきで問題に立ち向かう手がかりを示している。
保険営業にスーパーセールスパーソンに光を当てた上から目線の押し付けがましい成功物語ではなく、あえて等身大の悩み多きセールスパーソンに光を当て、それでも成長していく視座を提起したことがこの本の特徴である。 生保営業で誰もが経験する躓きの石を明確にし、その克服のための発想法を開陳したり、上司や先輩、部下とのかかわりの中で、どのように人間的に成長してきたか、を明らかにするその手法は斬新である。文献の引用や専門用語を避け、「中学生にも分かるように」自ら経験した事、反省点や分析視点を織り交ぜながら具体的に論述しているのも読みやすくしている。
正面から生保営業の素晴らしさ、楽しさ、難しさと格闘してきた自身の現場での営業体験を通して語られる42のテーマの一つ一つのが、小気味よく料理されている。読者は著者の保険セールス実践というフィルターを通した内容の確かさ、を容易に確認するだろう。実に読みやすくかつ示唆に富む。読み進めるごとに、「そうそう」と思わず膝を叩きたくなる箇所が随所に出てくる。鋭い心理的な分析の視点と穏やかな人間観察力、そして全編を通じて、保険の仕組みそしてそれを支える人間に対する信頼で貫かれている。 この本は、いわゆるスーパーセールスパーソンのノウハウ本や、斜に構えて訳知り的に保険営業のマイナス部分を告発する類のものと一線を画している。とても明るいプラス思考の正道をいく本に仕上がっている。 生保営業で壁にぶつかっている人の壁突破の格好のヒント集であるとともに、元気の出るビタミン剤でもある。保険の原点再確認の気づき満載である。生保営業に関心を持つ方が対象だが、たんに生保にとどまらず保険営業全般に通じる。生保に距離感、コンプレックスを持っている損保代理店の皆さんにこそ読んでいただきたいものである。
(保険ジャーナリスト 中崎 章夫氏より)